参議院議員選挙が始まった。7月4日公示、21日投票となる。福島選挙区は、議員定数の改正で2人区から1人に削減され、現職2人の一騎打ちの様相が強い。初日には、自民党、民主党、みどりの党の3党首が福島を訪れ福島復興を訴えた。3党首が初日から地方の福島を訪れるということは原発事故以前には考えられなかったことである。しかし、それぞれの復興に込めたその内容と工程表は大きく異なる。不明な部分も多いが、選挙での話が選挙後どれだけ憶えていてくれるかは、はなはだ疑問である。

同じ日の紙面の片隅に、あるセミナーでの講演の記事が載っていた。東北大学の小浜教授による高性能マグネシウム燃料電池についての話である。専門的・技術的な内容についてはわからないが、「持続可能とは『永続』ということ。原子力や化石燃料に依存したのでは持続可能な社会は訪れない。永続的なエネルギーは『砂漠の太陽光エネルギー』しかない。『燃料耕作時代』を自分たちで作り上げていかなければならない。」それがマグネシウム電池で可能になる。原発事故の福島の中で、これからのエネルギー社会に夢を与えてくれる話である。

福島にとっての復興は、災害前の状態に戻す復旧ではない。原発事故は人災事故であり、戦後エネルギー政策、広くは戦後日本社会の作り出した結果であることは明らかである。その福島の教訓を生かすこと、それは同じ間違いを起こさないための新たなエネルギー政策、そして戦後日本社会を問い直すこと、それを具体化するための夢を描けることが必要となる。今回の参議院選挙、これからの日本の方向性を決める重要な選挙であることは間違いない。しかし、なぜか不安と焦燥感だけが頭をよぎる。