8月30日、台風10号が東北の岩手県大船渡市付近に上陸した。東北の太平洋岸から上陸するのは、気象台観測史上初めてのことだという。台風9号が23日にも福島県沖を北上し北海道を襲っている。今回のように数日の間に台風の襲来を受けた記憶はない。福島は、比較的台風の被害の少ない場所だと思っていた。しかし、これまでの常識が気候の変化の中でも通用しなくなっていることを思う。

30日の朝は、福島県沖に上陸するのではないかということで、小中学校から高校まで臨時休校、朝の通勤時のトラックの姿もなく、まち全体が台風の動きを立たずを飲んで見守っていた。お昼ぐらいには風雨も強まったが、福島県沖を通過しているとのニュースに安堵した。通過した台風は、岩手県に上陸した。観測史上初めての出来事ということは、東北に住んできた住人には誰も経験したことのない事実である。上陸を免れた福島と上陸した岩手で被害の明暗を分けた。高齢者のグループホームを濁流が襲い9人が死亡した。痛ましい被害である。なぜ、そんな大参事になったのか、起きてみて初めて気づくことは多い。

自分の住んでいるこの場所で起こるわけがないと思い込んでいる災害、被災地の映像に気の毒だと思いながら、どこかで自分の場所でないことに安堵している自分がいる。災害を考えるとき、災害に対して当事者意識を持つことから災害対策は始まる。台風は九州の問題で東北にはあまり関係がないと思っていた自分、福島の原発事故は不幸な現実が重なったために起こった災害で、うちの近くにある原発はこれまで安全だったしそんな不幸な偶然が起きるわけはないと思っている自分がいる。災害に対する当事者意識、それは、自分の命がその災害によって脅かされるという意識を持つことから始まる。その危険を回避しようとする努力が防災対策を生み出す。想定外の意識に防災対策はない。たとえば自然界の営みで百年に一回起きれば頻繁に起きている地震ということになる。一人の一生で体験できるかどうか、それを体験した人たちの体験が正しく伝承し続けられる社会であることが最大の防災対策となる。災害の記憶を忘れ去ることで災害は繰り返すことを忘れてはならない。