東京電力福島第一原発で発生し続ける処理水の海洋放出の準備が最終段階を向かえている。

7月1日の福島民友の朝刊は、「原子力規制委員会は30日、処理水を大量の海水で薄めて放出するための設備について、最終確認となる現地での使用前検査を終了した。施設全体で問題はなかったという。7月上旬にも東電に検査合格を示す終了証を交付する予定で、放出に必要な設備面での準備はすべて整うことになる。」と報じた。あとは、政府の政治判断による放出開始が秒読みの段階を向かえたこととなる。

5日の朝刊(福島民報)には、4日に、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が官邸で岸田首相と面会し、「海洋放出計画は、国際的な安全基準に合致する」との包括報告書を手渡したとの記事が掲載され、骨子には、①東京電力福島第一原発の処理水を海洋放出する日本の計画は、国際的な安全基準に合致している。②海洋放出は日本政府による国家的決定であり、この報告書はその方針を推奨するものでも、指示するものでもない、とされた。7日には、原子力規制委員会が、海洋放出する設備の性能に問題はないとして、使用前検査の合格を示す終了証を予定通り交付した。

6月23日の海底トンネルの完成から2週間で海洋放出までのセレモニーはすべて順調に終了した。「夏ごろ」とされた放出開始もすでに7月となっており、夏は8月まで、9月になると秋となることを考えるとすでにカウントダウンは始まっている。すべてが政治日程に合わせて粛々と進められていく。

国際社会からの日本政府の決定には干渉しないとのお墨付きを得ても、国内での政府決定への不信感は払拭されない。処理水を永遠に保管し続けていくことが無理であることは誰にでも分かる。それが新たな自然災害等(地震や台風、国際テロ)による大量放出事故を想像するとまだ人間の制御可能な中での放出もやむを得ないと思わざるを得ない。しかし、原発事故からの12年間、政府の対応が生み出してきた被災地住民の政府への不信感は全く払拭されていない。信頼関係を失った中での計画は、新たな不安を拡大していくことにもなりかねない。

世界的な原発の推進は、放射性廃棄物の海洋投棄が一段と進んでいく可能性を高めていく。事故処理のためのやむを得ない処置と計り知れない被害をもたらす原発の廃止に向けた対応、国際的な安全を守るために、原発の位置づけが根本から問われている。