12月に入ると、今年も10大ニュースの話題が上がってくる。月別の県内10大ニュース候補を眺めると、今年も慌ただしく過ぎ去ろうとしている中で、原発事故に関連した最高裁判決の3件が10年の歳月を経て結審した話題、双葉の全町の避難が11年ぶりに解除された話題、処理水海洋放出計画の認可決定された話題、原発事故に係わるニュースが目につく。

原発集団訴訟では、東電の損害賠償は認めているが、国の賠償責任は認めないということが10年の歳月をかけて出された最高裁の結論である。11年ぶりの避難解除ということは、以前のように住める場所に戻ったと言うこととは全く違う。風景はすっかり変わり以前のような生活の営みを知る面影はない。

世界的には、ロシアとウクライナの戦争が2月に始まり、収束への道のりはまだ遠い。戦争の影響は世界中に暗い影を落としている。世界中が凍えながら寒い冬を過ごすこととなる。戦場となったウクライナの惨状は、人災以外の何物でもない。今の危機を乗り越えるには、背に腹は変えられないと、世界中が原子力発電の復活・再稼働へと動いている。ウクライナの戦場では、原子力発電所をめぐる攻防が、チェルノブイリの原発事故を連想させ世界を不安に陥れる。

原子力発電所のもつ二つの顔、原子力の平和利用としての発電施設、一方では戦略核施設として全土に敷設された地雷原である。戦争は世界中に軍拡競争を加速させ、原子炉の廃炉の動きはすっかり影を潜めている。日本も世界の動向に合わせるように、原子炉の廃炉・縮小の方針は大きく転換され、再稼働・増設へと原子力政策は大きく舵が切られた。

10年を経て、福島の原発事故は、日本社会に、世界に、何を教訓として残したのか。原発は有事の際は、ターニングポイントとして攻撃目標とされることを思えば、これを防衛するだけでも大変な防衛予算を必要とする。日本全国には、廃炉等も含めると71基の原子炉がある。これを現実に守り切ることが出来るのかというと不安である。

太平洋戦争の当事国として、原子爆弾の被爆国として、原発事故の当事国として、日本が学んできた教訓を、世界の悲劇を繰り返さないためにどう生かしていけるのかを考えなければならない。