2021年9月 代表メッセージ

コロナ禍が収まらない中で、東京パラリンピックも無観客で無事終了した。オリンピックとともにご苦労様でした。初期の目的は、福島の復興を世界に発信し、日本の素晴らしさをアピールする世界の祭典となるはずだった。それが、コロナ禍で、無事開催し終了することだけが目的となってしまった。残念ではあるが、イベントは、無事終了すれば、基本的には成功と言える。異常事態での運営に関わった大会関係者のみなさん、参加選手のみなさんには賛意送りたい。

それにつけても残念なのは、福島の復興の話である。復興が進んだ福島を世界に自慢しながら発信しようとした思惑は、現実の中で悉く挫折してしまった。開催間際での処理水の海洋放出決定は、放射能問題の解決していないことを世界に発信することとなり、環境問題での対応の不味さと復興の遅れを世界に伝えることとなった。行政が取り組む福島の復興の話題の中心は、原発事故による帰還困難区域内の復旧・復興に移ってきている。福島県は広く一言で復興を語ることはできない。しかし、場所についての距離感を持たない外国人にとっては、福島県という括りでも充分細かく、汚染水では「日本は、まだ放射能問題を解決できていない」という日本への反応を誘発してしまっている。

「現実に進められている復旧・復興で発生した土壌『建設発生土』の搬入先が決まらず工事が停滞している。」(9月2日「福島民報」)詳細を見ると放射性物質濃度が1㌔当たり8,000ペクレルを超える分の「建設発生土」で、放射性物質の汚染された表土などの建設発生土に関する規定が法律になく、原発事故の発生から間もなく10年半となる今もなお、対応が宙に浮いたままとなっているということである。

「東京電力は25日、福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、全体計画案を発表した。第1原発から海底トンネルを掘削し、沖合の約1㌔先から放出する」(8月26日「福島民友」)処理水は海水で薄め、約1㌔の漁業の行われていない沖合に放出するので問題はないとの判断のようである。10年間も先送りしてきた結果の結末は、海洋汚染の拡散で済まされてしまうのかと思うと残念である。「汚染水を浄化する多核種除去施設(ALPS)で高性能フィルターが10カ所破損していた。」(9月3日「福島民報」)対応のずさんさだけが目につき不安は払拭されない。