原子力規制委員会からの2015年9月時点での原発80㌔圏の放射線量分布マップが公表された。2011年11月時点に比べると放射線量は65%減少したということである。当時半減期は5年と言われていたが確実に下がってきている。この変化は、自然に時間の経過の中で放射線量が減少していることを示している。現在行われている除染作業は、放射線量の多い土を掃除をして、一箇所に集める作業である。航空測定による公表されたマップに見る放射線量減少にどれだけ貢献したかについては疑問である。

まもなく原発事故から5年が過ぎようとしている。原発事故や放射能汚染水の流失の可能性は世界的に高まっている。日本国内には約50基の原発があり、中国・韓国・北朝鮮と周辺隣国を見渡すと建設ラッシュとなっている。稼動を停止しているから安全と言う保証は何もない。長期間停止している原発にも使用済み核燃料、汚染水は存在する。設備は時間とともに劣化していく。使われなくなった設備の管理はズサンになっていく。5年間の時間を経て再稼動した原発、修理・メンテナンスに対する対策は万全なのか。日本地図、世界地図を広げ、原発から80㌔圏を眺めると、日本国中安全な地域はほどんとない。風・水・空気、地球の営みに国境はない。隣国の事故もまた他人事ではない。

現在存在する原発の実態、これは誰も否定できない現実である。この世界で生きている私たちには、これに伴うリスクを正しく理解し具体的な対策を立てていくことなしには生きていくことができない。福島県の5年間の経験を特定の場所で起こった事故として風化させてはならない。

昔の話になってしまうが、障がい者支援を行っている中で、交通事故で車椅子の生活になっていた障がい者団体にリーダーから、「誰でもいつ障がい者になるかわからない。」と言われたことが頭をよぎる。自分を支援する側にたつ私たちに障がい者となっている当事者からの越え難い心の溝があることを言いたかったに違いない。生きている私たちにとっては、リスクを抱えた当事者としてのリスクの理解と対策でなければならない。統計と賠償のためのリスク管理、事故率、そこには当事者の苦悩が消されている。