管総理が福島原発を視察後、汚染水の最終処分の動きが活発化してきた。10月末までには政府方針を決定するとの報道がなされた。海洋放出の方向で進んでいるとのことである。しかし、これに対する反対の声が各方面から上がり、11月になっても政府方針はいまだ明確にはされていない。

汚染水の問題は、事故後の早い段階から問題となり、様々な対策が取られてきた。増加し続ける汚染水を増やさないための対策、タンクの増設地の確保、タンクからの汚染水漏れ対策等々、これらはその時々の対処療法的な対策に終始し、抜本的な対策を取れずに現在に至っている。

現在の汚染水で問題になっている物質は、どうしても除去できないトリチウムと言われている。これは毒性が弱いので、希釈して海に放出すれば問題ないと説明されている。放出した場合の被害は風評被害でこの賠償をどうするのかというが、本当に賠償金で解決できる問題なのだろうか。

広大な敷地を埋め尽くした汚染水のタンク群、どれが安全で、どれが危険なのか、その判断基準を、ほとんどの人は持ち合わせていない。放射能を放出する放射性物質はかなりの種類があり、汚染水を調べると様々な放射性物質が含まれているとの報道もあり、すべての放出する汚染水が、現実に除去されているのかとの不安も残る。

本来、原子力発電は、汚染水の処理、使用済み燃料の処理、すべてが不完全な技術の上に築かれてきた。課題を解決できないまま推進してきた結果である。原子力発電が砂上の楼閣に築き上げられてきたことを国が認め、原発廃止の方針を明確にし、最大限のリスク回避の対策を明確にしながら国民の理解を求めていくべきと思う。国への不信感を払拭できなければ、安易な決定は不信感を拡大することとなる。

現実にできてしまった厖大な数のタンク群、10年を経てタンクの劣化も進んでいく。いつまでも放置しておけないのも現実である。廃炉作業では、溶け落ちたデブリの回収という難問も待ち構えている。リスクを隠しながらの決定は、解決を先延ばしして行く。

想定外の自然災害で、タンクが破損し海に流れ出してしまったという結末だけは避けたいものである。