4月3日に開始された新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が6日で期限切れになることから、緊急事態宣言を5月の31日まで延長されることが決定した。街の中は人影もまばらで、平日・休日に関係なく多くの店舗のシャッターが降りている。この状況がこれから一ヶ月も続くのかと思うとゾッとする。

テレワークや時差出勤という新たな働き方の提案がされているが、現実的にテレワークで成り立つ業種や仕事はどの程度あるのか。仕事の現場の多くでは、仕事がなくなり自宅待機、時間短縮が行われる。これらを背景に時差出勤等が可能となる。解除後の復活に望みを繋ぎながら、雇用を繋ぎ止めるための経済対策として雇用調整助成金は不可欠となる。しかし、多くのサービス業は淘汰されていくこととなる。グローバル化した産業構造の激変の中での生産の減速、淘汰されるサービス業は、大量の失業者を生み出し、新たな雇用・就労環境の整備が全国の課題となっていく。世界的な保護主義の展開は、自国内での自給率を高める産業構造への転換が警急の課題となる。その中でも食糧自給の確保は、国民の食を守る基本となる。大量に生まれる失業者を、地方の高齢化する農村地帯が吸収していくことで、新たな産業を生み出して行くための出発点となることが期待される。

緊急事態の達成目標に「人と人との接触8割減達成」が上げられている。既存の人間関係を2割まで落とすためには、ほとんど自宅に引きこもっているしかない。しかし、解除されて学校・職場が復活すれば接触も以前に戻ることになる。コロナウイルスの性格上、この1ヶ月の間に感染が収まり、その後の感染が起きないとは考えにくい。感染症に詳しい専門家の話(「感染症」井上栄著・中公新書、「感染症の日本史」磯田道史著・文藝春秋5月号)では、コロナウイルスは感染症を引き起こすウイルスで昔からあり、ウイルスとの戦いは、人類の歴史とともにある。既存のものとは違うので新型とされているが、既存の感染症対策と既存の対処療法・既存の薬でも完全ではないが十分対応できる。ワクチン等ができるまでは、感染予防のための感染症対策を長期的に続けるしかないとのことである。誰もが感染する可能性がある中では、接触割合の数字目標を個人に要求するのではなく、接触時のマナーを広く普及させていくことが大切であり、今回の緊急事態宣言の期限延長は、感染した場合の医療体制が安定的に整備されるまでの猶予期間と考えたい。免疫を得るとは、ウイルスとの共生状態を意味する。感染するか、ワクチンを接種するか、免疫を得るための方法には2つあるが、免疫を持つまでは感染リスクは消えない。

現代医学の進歩は私たちの想像を遙かに超えている。細胞の遺伝子解析はすべて可能になっている。コロナの遺伝子解析も当然行われているものと思われる。これまでの臨床での知見と解析能力を総合すれば、過去のスペイン風邪のような大惨事は回避することができると信じている。過度の不安を煽ることなく、正しいリスクと対策を徹底することから解除後の世界は始まる。以前に戻るのではなく、新たな緊急事態解除後の世界を模索していかなければならない。